こんばんは,いし胃腸科内科の松原央です.
本日より,ヒブワクチン,小児用肺炎球菌ワクチンの接種が再開しました.
当院でも,本日から両ワクチンを接種しました.
ところで,両ワクチンが接種一時見合わせになったのは,ワクチン接種後の
死亡例が報告されたからです.ワクチン接種との因果関係は証明されて
いませんが,他の定期接種されているワクチンについて,昨年夏に
報告された予防接種後副反応報告書を元にまとめてみました.
今日は,三種混合ワクチン,麻しん風しん混合(MR)ワクチンについて解説です.
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平成20年4月から平成21年3月までの定期予防接種の被接種者数
DPT* 1期 4,478,291
DT** 2期 893,773
*DPT:三種混合ワクチン 1期は3回+追加1回の計4回の延べ人数
**DT:二種混合ワクチン
麻しん風しん 4,023,905
麻しん 6,337
風しん 7,036
*麻しん風しんワクチンは,1歳,12歳,18歳が接種該当年齢
ポリオ 2,128,848
BCG 1,067,437
*ポリオは2回接種の延べ人数
北海道では定期接種ではありませんが参考のため
日本脳炎 666,631
それでは,各ワクチンごとの副反応はどうだったのでしょうか?
DPT(三種混合ワクチン)
副反応報告 299件(男178件,女121件)
24時間以内 124件(41.5%)
1~3日以内 172件(57.5%)
0歳 43件,1歳 100件,2歳 74件,3歳 35件
接種局所が肘を超えた異常腫脹 154件
アナフィラキシー 2件
蕁麻疹 4件
39℃以上の発熱 27件
全身の発疹 19件
けいれん(発熱をともなう) 1件
その多くは,肘を超えるような接種部位の腫れでした.
頻度は,154/4,478,291=0.003%
しかし,副反応の中でもいくつか注意すべきものがありました.
報告書にあがっているものを列記します.
1歳6カ月 女児 急性脳症
接種翌日より38℃の発熱,けいれん(眼球挙上),チアノーゼ出現,入院.当日午後より呼吸不全,気管内挿管,人工呼吸するも夕刻死亡.
他の疾患は考えられず.
4か月 男児
接種翌日より紫斑.血小板4000/μlにて特発性血小板減少性紫斑病の診断.改善.
5か月 女児
接種2日後出血斑.血小板数13000/μl,PA-IgG 11900にて特発性血小板
減少性紫斑病の診断.改善.
6歳9カ月 女児
接種翌日より局所の硬結,圧痛.5日後,自潰・排膿のため切開.治癒.
4か月 女児
接種当日より熱発.BCG部位発赤,川崎病疑い.
(DTワクチン)
12歳5カ月 女児
接種後10~15分全身倦怠感,歩行時のふらつきあり救急車にて搬送.MRI,MRAに異常なく翌日歩行可.
12歳2カ月 女児
接種後30分吐気あり,嘔吐1回.眼食不良.疲労感にて歩行不能,受診.
入院は本人拒否.経過観察,軽快.
ワクチンと関係のありそうなもの,注射という行為を受けたことによるもの,
発症前にワクチンを偶然受けていたものなどが考えられます.
しかし,この報告書には三種混合ワクチンについての『まとめ』がなく,
因果関係について言及されていませんでした.
麻しん(単独)
副反応 0件
風しん (単独)
全身反応(発熱等) 1件
麻しん風しん(MR)混合ワクチン
副反応報告数 72例(男38例,女34例)
副反応報告 98件
24時間以内 29件(30.0%)
1~3日 22件(22.4%)
4~7日 12件(12.2%)
8~14日 28件(28.6%)
15~28日 4件(4.1%)
29日以上 3件(3.1%)
1歳 33例(53件),5~6歳 8例(11件),
12~13歳 15例(17件),17~18歳 14例(17件),
不明 1例(0件)
副反応からの回復 66件
回復していない 3件(2件;その他の異常反応,1件;全身反応(発熱等))
回復状況不明 30件
その内訳は,
血小板減少性紫斑病 3例(すべて1歳女児)
接種5分以内意識消失,痙攣 2例(12歳男児,17歳女児)
直後顔面蒼白,口唇チアノーゼ,意識消失 1例(17歳女児)
接種数分後意識もうろう 1例(18歳女児)
接種当日意識消失,連投,顔面打撲,血圧低下
1例(17歳男児)
1日目39℃,5日目解熱,傾眠傾向,8日目急に走り出す,
9日目意識消失発作,けいれん,髄液所見よりウィルス性脳炎
1例(6歳女児)
3日目左顔面麻痺 1例(4歳女児)
接種4日目急性小脳失調症 1例(1歳男児)
接種15日目発熱,16日目痙攣,痙攣重積型急性脳症
1例(1歳女児)
死亡例なし
「まとめ」
MR予防接種後副反応報告症例数(件数)は72例(98件)であった.
ウィルス性脳炎が1例,神経合併症が3例報告された.
となっていました.
これらの接種は,おそらく大多数は単独接種でしょう.
今回の報告を下に示します.
いずれも2種類,または3種類の同時接種を受けていた方でした.
また,基礎疾患で心疾患が3例います.
このように書くと,同時接種が悪いのかということになりますが,
世界的は,3種類以上の同時接種が一般的に行なわれています.
そのために,ワクチン接種後の死亡例が増えたという報告もありません.
日本での状況を考えると,1歳までの接種しなければならないワクチンが
三種混合3回,BCG1回,ポリオ1~2回,ヒブ3回,小児用肺炎球菌
ワクチン3回と最低でも11回あります.
第1子で集団保育に通わなければ,予定通り接種できる可能性は
あるかもしれません.しかし,兄,姉がいる場合,生後数ヶ月で保育園に
通う場合などは,風邪や胃腸炎などでワクチン接種のタイミングが
合わない方もいるでしょう.
細菌性髄膜炎にかかるリスクとの比較になりますが,子どもの
状態によって接種タイミング,方法を考えなければなりません.
ワクチンの接種方法について迷っている方は,かかりつけの先生に
相談すると良いでしょう.
もちろん,当院でもお子さんに合わせてワクチン接種プランを立てますよ.
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