こんにちは,いし胃腸科内科の松原央(まつばらひろし)です.
沖縄で1歳の男の子が日本脳炎にかかりました.
病気の説明は,沖縄県がマスコミに流した上の書類に記載されています.
北海道の方は日本脳炎になじみはないでしょうけど,道内の母子手帳には
定期接種ではないのに,なぜか予防接種欄に「日本脳炎」があります!?
予防接種は,北海道を除く全都府県で定期接種で施行されています.
しかし,北海道では任意接種なので自費で接種しています.
当院でも,道外から転勤してきた方や,実家が西日本の方が,時々きます.
日本脳炎の定期接種の推奨年齢は3歳からですが,今回のように1歳の子が
罹ったことが報道されると本当に3歳からで良いのか?という疑問がおきます.
接種対象は6カ月からとなっているので,できるだけ早いうちに接種した方が
良いのかもしれません.
そうすると,3種混合+ヒブ+肺炎球菌+不活化ポリオだけで1歳までに12回!
プラス日本脳炎+ロタワクチンが0歳代から導入されると単独で接種するのは
厳しいですね.国内でも使用できる混合ワクチンの開発が望まれます.
ところで,北海道って本当に日本脳炎ウィルスをもっている豚はいないの?
上の図は < 北海道では、日本脳炎の予防接種がない!? >より
これは国立感染症研究所の報告です.
「北海道でも日本脳炎ウィルスの抗体を持つ豚がいます」とあります.
2000年以降,9年中5回は確認されています.
そして,最近のデータは,
2009年には陽性で,2010年は陰性でした.
今年度の北海道の日本脳炎の定期接種は,予防接種法の第2章
「予防接種の実施」の第3条の第2項に従い,定期接種から外れています.
「都道府県知事は,前項に規定する疾病のうち政令で定めるものについて,
当該疾病の発生状況等を勘案して,当該都道府県の区域のうち当該疾病に
係る予防接種を行う必要がないと認められる区域を指定することができる.」
今の世の中,出身の都道府県内に一生とどまっている人はいないですよね.
子どもの頃は住んでいたとしても,進学・就職したら北海道出身の人も,
都府県に移り住むことは十分ありえます.
それを考えると,北海道でも定期接種にすべきです!!
また,上記のブログの中で,このような記事もありました.
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<予防接種をしないで日本脳炎発病の例>
関東地方の小学生。居住地区近隣には豚舎もないし・・という
理由でワクチンを受けていなかった。
夏休みに九州・某県の親戚の家に1週間ほど遊びに行った。
帰ってきてから発病し入院。大病院転院したが、亡くなった。
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居住区域に豚舎がないからワクチンを受けないというは良く聞きます.
私も未接種なので,京都にいた時にワクチン接種した方が良いのか
尋ねたことがありました.
その時の回答は,「都市部で生活しているなら必要ない」でした.
ですので,接種するのはやめました.
確かに子どもが小さい頃の行動範囲は,電車で行けるところだけなので,
豚舎がある地域には行きませんでした.
でも子どもが大きくなってからは,いろいろなところへ行くようになりました.
今となっては,自分も接種しておいた方が良かったのかなと思ます.
もちろん,自分の子どもには接種していますし,外来で必要なワクチンの
ことを聞かれた時には,水ぼうそうとおたふくかぜのほかに
日本脳炎とB型肝炎のワクチンの接種を勧めています.
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コメントをお書きください
norimama (日曜日, 17 7月 2011 12:59)
いつも読み逃げではありますが、お邪魔させていただいています。
日本脳炎の予防接種については、どうして北海道では接種が自費なのかわかりませんでした。10年ほど前まで、神奈川在住だったので今中2の娘は、追加まで接種していますが、下の子は追加接種していません。
ずっと北海道内だけで生活するなんてことは考えられないので、やはり追加接種したほうがいいかな、と思いました。
えー、B型肝炎ワクチンも打ったほうがいいのですね。全く知りませんでした。
下の子は、ポリオワクチンの2回目の時、少し戻したので、効果は、どうなのかと、ずっと考え、今に至っているだめ母です。念のため、不活性化ポリオワクチンうけたほうがいいでしょうか?
先生もお忙しいとは思いますが、子供達のために頑張って下さいね!
松原 央 (日曜日, 17 7月 2011 21:12)
norimamaさん
こんばんは,コメントありがとうございます.
ご実家が道外でしたら,日本脳炎のワクチンは任意接種で
うっておいた方が良いと思います.
いずれB型肝炎のワクチンのこともブログに書こうと思っていますが,
HBe抗原陽性者の場合は涙や唾液にもかなり多くのウィルスが排泄
されているため感染源となりえます.
母親がB型肝炎ウィルス抗原陽性であれば,そのお子さんは出生時から
ワクチン接種を行ない予防できますが,父親や祖父母が陽性の場合には,
知らない間にB型肝炎ウィルスに感染していることがあるようです.
感染した子どもが知らずに生活していると,友人にうつしてしまう
可能性があります.
そのような点からもB型肝炎のワクチンの接種が勧められます.
生ワクチンの2回目の時に,どのくらいの時間が経って戻したのか
わかりませんが,将来不活化ワクチンを接種するのは有効だと思います.
現時点では,生ワクチンを接種した子どもと接触する機会が少ないと
思われますので,様子をみることもできると思います.
ご心配でしたら,ワクチンの抗体価を調べてみるのも良いかもしれません.
これからも,当ブログをよろしくお願いいたします.
mamiyo8090 (火曜日, 26 7月 2011 19:39)
日本脳炎の事最近しりました。北海道だけなぜ任意なのか不思議です。
私の孫は2歳の時に細菌性髄膜炎になり生死をさまよいました。
今目立った後遺症はないものの、今も体力がなく熱をだすたび怖くて仕方がありません。
2年前は接種も今のように進めていませんでした。
ポスターぐらいは目にしたかもしれません。
少しでも病気から守れるなら受けたいものです。
小児科の先生は北海道は大丈夫。受けなくとも良い。とのことでしたが…
任意でも受けたいものです。
松原 央 (火曜日, 26 7月 2011 22:25)
mamiyo8090さん
コメントありがとうございます.
北海道だけなぜ任意なのか?
道外を『内地』と呼んでいた時代は人の移動も少なく,また道外へ
進学,就職する人も少なかったので,北海道で日本脳炎の予防接種は
なくても良いということが受け入れられていたのでしょう.
しかし,今では道外,道内の区別は無く,国民全員が日本脳炎の予防接種を
受けるべきと考えます.
お孫さんの細菌性髄膜炎の時は,大変心配されたと思います.
患者さんを担当する医療者も,髄膜炎の患者さんを受け持った時は,
こちらの心も痛みますからね.とくにワクチンで防げる髄膜炎であれば
なおさらです.
VPD(Vaccine Preventable Diseases)ワクチンで防げる病気に関しては,
ここ数年でマスコミでも取り上げられるようになったので,医療者よりも
一般の方のほうが詳しいかもしれません.
『北海道は大丈夫,受けなくとも良い』と言った先生は,北海道から
出なければという意味もあるのかもしれませんが,子どもが成長すると
道外へ行く機会は増えていくでしょうから,是非,日本脳炎のワクチンを
受けて下さい.