予防接種についての私見です.
今年の4月から3つのワクチンが新たに定期接種に加わりました.
3つのワクチンとはヒブワクチン,肺炎球菌ワクチン,子宮頸癌予防ワクチンです.
定期接種とは,「予防接種のうち,国が接種を勧奨しているもの」をいいます.
「国が推奨する」ということは,日本国民全体にとって有益であるものが
優先度の高い予防接種という見方ができます.
どの予防接種が日本国民全体にとって有益なのかを考えてみましょう.
3つのワクチンの中で,子宮頸癌予防ワクチンだけが女性を対象にしたものです.
子宮頸癌ワクチンには,サーバリックスとガーダシルの2種類があります.
サーバリックスは子宮頸がん発症原因のヒトパピローマウイルス(HPV)
16型・18型に対するワクチンであり,ガーダシルはそのHPV16型, 18型に
尖圭コンジローマに関与する(6型,11型)が加わったものです.
もし尖圭コンジローマ予防のために男性も対象にするならば,
ガーダシルを接種することになります.
しかし,尖圭コンジローマの発症頻度は国立感染症研究所の資料によると
年間10万人あたり30人程度です.
日本の人口を1億3000万人とすると1300人です.
2012年の厚労省の資料の「予防接種法上の疾病区分について
(厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会)」では,水痘の年間推定患者は
100万人,おたふくかぜは43.1万-135.6万人/年(2002-2007年).
また,成人の肺炎球菌は推定肺炎患者数約100万人/年です.
ちなみに子宮頸癌は8474人/年でした.
年間の推定患者数を元に,どの疾患に対して予防接種を行なうことに
意義があるのか考えてみましょう.
年間1300人または8500人が罹る病気と,年間100万人前後の感染が
起こっていると考えられる病気.
もちろん感染症とがんを同列に考えることはできません.
感染症に関しては感染しても重症化しなければ良いと考える人もいるでしょう.
しかし,おたふくかぜは1000人に1人は難聴を合併することが知られています.
しかも難治性のものが多いのが特徴です.
さらに,水痘,おたふくかぜは学校保険法で出席停止と定められています.
罹った子どもの親は看病のため仕事を休まなければなりません.
罹った本人だけではなく,その親の就労にも影響を及ぼします.
仕事を休むということは経済の損失です.
視点を変えて,費用面から考えて見ましょう.
一般的に子宮頸癌予防ワクチンは3回45,000円が多いと思います.
水痘は6,000~8,000円で1回または2回接種.
おたふくかぜは4,000~6,000円で1回または2回接種.
成人用の肺炎球菌ワクチンは6,000~8,000円です.
子宮頸癌予防ワクチンの対象は小学校6年生から高校1年生ですから,
その対象(または対象年齢以下)で必要なワクチンを考えてみましょう.
水痘を2回接種+おたふくかぜを2回接種で,多く見積もって28,000円.
45,000円-28,000円=17,000円ですから,その予算で他のワクチンを
考えるとB型肝炎ワクチンがあります.
これはユニバーサルワクチン(全例対象のワクチン)で,しかも広い意味では
肝癌の予防もワクチンでもあります.こちらは3回の接種で15,000円.
水痘+おたふくかぜ+B型肝炎のワクチンの合計金額は
子宮頸癌予防ワクチンの金額を下回ります.
日本国民全体に利益があるように考えて成人用の肺炎球菌ワクチンを
加えても子宮頸癌予防ワクチン代の3,000円アップですみます.
限られた予算で最大の効果を期待するならば,
小児科医的には水痘+おたふくかぜ+B型肝炎がお勧めです.
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