こんにちは,たんぽぽ小児科の松原です.
昨年の風しん報告数が過去5年で最も多いと報じられ,
さらに今年4月末の速報値は昨年の倍以上となってます.
年別風しん患者報告数
年 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013※ |
全国 | 303 | 147 | 87 | 374 | 2391 | 5445 |
北海道 | 11 | 4 | 0 | 20 | 21 | 37 |
札幌市 | 5 | 2 | 0 | 3 | 9 | 22 |
※:第17週現在の速報値
とくに感染者は20代~40代の男性に多い傾向があります.
なぜ,この年代(1963~1992年生)の男性に多いのでしょうか?
国内の風しんワクチンの変遷をみてみましょう.
1977年8月から1995年までは女子中学生のみが
ワクチン接種の対象者でした.
しかし,予防接種法改正により1995年4月から
生後12ヶ月以上〜90ヶ月未満の男女となりました.
しかも,この法改正時に経過措置として,
(1)1995年度に小学校1~2年生でかつ生後90カ月未満の者
(2)1996~1999年度に小学校1年生
(3)2003年9月30日までの間は
1979年4月2日~1987年10月1日に生まれた
12歳以上16歳未満の男女(標準中学生)
3群が対象となっていました.
1979年4月以降に生まれた国民全員に対して風しんを
予防しようとしていた国の考え方がわかります.
しかし,残念ながらこの措置は集団接種ではなく個別接種
だっため接種率は低かったようです.
1977年に女子中学生が対象になったということは,
1963年以降の男性はワクチン接種を受けていません.
また,1979年~1994年生まれの男性も経過措置のワクチン
接種を受けていなければ,抗体保有率が低いと考えられます.
まさに今回20~40代の男性に風しん患者が多いのは,
ワクチンの変遷を振り返ると理解できるでしょう.
また別な意味ではワクチンの有効性が示されたと言えます.
***** 注 意 *****
(3)2003年9月30日までの間は
1979年4月2日~1987年10月1日に生まれた
12歳以上16歳未満の男女(標準中学生)
1995年まで女子中学生に対して集団接種が実施されていました.
しかし,この時期から個別接種に変更となったため,
該当年代の女性の接種率がそれ以前と比べ低下しています.
1988年10月2日以降生まれは,経過措置の(1),(2)が
あったため,ワクチン接種率は(3)よりも高くなっています.
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平成23年度の国の調査で,
20~40代の男性の15%(20代 8%、30代 19%、40代 17%)
が風しんの抗体を持っていませんでした.
一方,20~40代の女性の4%が風しんの抗体を持っておらず,
11%は感染予防には不十分な低い抗体価でした.
以上よりワクチン対象者を考えると,
積極的なワクチン接種対象者,
26~51歳の男性
26~34歳の女性
その他の年齢層を上記から外した理由は,
男女ともに
51歳以降 感染経験があり,抗体を持っていることが多い
26歳以前 予防接種の接種率が高いく抗体がある
女性
34~51歳 中学生で義務接種を受けている
もちろん,対象年齢に含まれていなくとも,
風しん抗体価の低い女性は妊娠前に接種が必要です.
それでは,なぜ風しんの流行が注目されているのでしょうか.
抗体を持たない,又は低い抗体価の妊娠中の女性が
風しんにかかると,赤ちゃんに生まれつきの難聴や心臓の病気,
白内障や緑内障などの目の障害が起こる可能性があるからです.
これを先天性風しん症候群といいます.
これ以外にも新生児期に出現する症状として,低出生体重,
血小板減少性紫斑病,溶血性貧血,間質性肺炎,
髄膜脳炎などがあります.
昨年の流行の影響で,平成24年10月~平成25年3月末までに,
8人の先天性風しん症候群の患者が報告されています.
幸い北海道での報告はありません.
年別先天性風疹症候群報告数
年 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013※ |
全国 | 0 | 2 | 0 | 1 | 5 | 5 |
北海道 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
札幌市 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
※:第17週現在の速報値
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